念願の仕事に就けたけど、、、
入社1年目の春、私は晴れて旅行に携わる部署に転属された。
親会社から出向しているおじいちゃん社員や優しい女子の先輩社員には本当によくしてもらったのに、当時の私は感謝の言葉を言わなかったと思う。
恩知らずな私であった。
そんな性格だったし、自分の能力を自覚してない私は次の部署で地獄に落とされることとなる。
希望して配属になった旅行カウンターは、東京の郊外の大きなショッピングセンターの一角にあった。
店舗は狭かったがやたら売り上げがいいために社員はたくさんいる。ぶつかりあって仕事するみたいな雰囲気だった。
人間関係は前の部署とは雲泥の差で、店長は私と入社1年目の子に「使えない、犬猫の方がまし」と言うようなすごいおじさんで、前からいた二人の一流短大出の女子は見るからに冷たい感じ。
それに、旅行カウンターにあこがれていた私だが、超人見知りで知らない人と話すことが苦手だったのだ。
今はそんなことはないが、知らない人の前に出るだけで緊張する私であった。
21歳だった私は、航空券や電車の切符を売るのでさえ段取りよく聞いて処理することができない、まして「OO方面に行きたいんだけど、パックでもいいし、個人旅行でもいいし」なんていうお客さんとはどう話していいかわからなかった。
あこがれの仕事があっても自分の性格とか適正を考えた方がいいということですね。
当時あったテレックスとか航空券が出てくる機械もどうあつかっていいかわからない、お金をもらったときの伝票処理なんかも初めて。
しかし、忙しさもあったのだろうけど誰も教えてくれなかった。
プライベートなことで話しかけてくれる人もいなかった。
ただ仕事のできない邪魔者を見るみんなの目だけがあったと思う。
1年間そこにいたけど、私はどんな風にどんな仕事をしていたの覚えていない。
ただ、中年の女性のお客を怒らせ、おわびに会社のロゴの入ったバッグを上げようとしたが断られたこと、何かで損害を出して自分のお金を2千いくら出せと言われて出したことを覚えている。
アパートの近くの友人が留学をするのに来てくれて、そのときだけ店長がいい顔をした。
そう、その頃の私は学生時代から住んでいた町に友人がたくさんいて、その子たちと会うのだけが楽しみだったのだ。
いい会社で旅行を売る仕事をしているという見栄と友人がその頃の私の救いだったといえよう。